「えー…なくなってる。
仕方ない、走って帰るから、丹羽くん帰っていいよ。」


丹羽くんまで、私に合わせてもらう必要ないし。




「戸塚は本当にバカだな。」


「…バカバカって、知ってる。」


普段はなんとも感じない、バカって言葉が突き刺さって。
悲しくて。

泣かないように、くいしばる。



「…とりあえず、靴履けって。」


私の異変に気づき、遠慮がちな丹羽くんの声が余計に悲しくさせる。

コクンと、うつ向いたまま頷き、靴を履くと。
丹羽くんが傘を差し出した。