前谷くんって丹羽くんと仲良いんだなあ。

あ、じゃあ、私のわからない丹羽くんの言動の意味とかも、前谷くんに聞いたら、わかるかもと。
話しかけようとしたところで。


キーンコーンカーンコーン…。


「あ、歴史の時間終わったね。」と言い、前谷くんは前を向き直してしまった。

タイミング悪くチャイムが鳴ってしまい、前谷くんとのやり取りも、歴史のプリントも中途半端に。


とくに困った、歴史のプリント。
今日中に提出しないといけないのに。

自分の席に戻りプリントと、にらめっこ。


「戸塚。」


「うん?」


不意に丹羽くんに声をかけられ、少し驚く。

「…悪かったな、前谷くんのせいでプリント教えられなかった。」


「いやいや!全く気にしてない大丈夫。」

まさか丹羽くんから謝罪の言葉が出るなんて…。
私が教えてもらうほうだから、むしろ申し訳ない。





「それでさ、今日空いてる?」



「……え?」



そのとき、プリントから丹羽くんに目を移した私は心底驚いた。

だって、丹羽くんは初めて、優しい言葉を優しい表情で私に向けたのだ。