【キャスト】
社長:ミラ子さん 課長:真砂・清五郎
派遣事務員:深成 女子社員:あき
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 ある日のお昼前。
 自席でPCに向かっていた真砂の顔が、僅かに顰められた。
 同時に十二時を告げるチャイムが鳴る。

「さ〜、お昼だ〜」

 嬉しそうに伸びをしつつ、深成がいそいそとお弁当を用意する。
 そしてふと、真砂を見た。

「課長、お昼だよ」

 渋い顔で頭を押さえている真砂に言う。

「……ああ」

「お昼からさ、出来た書類のチェックお願いしていい?」

 具合でも悪いのかと思い、ちょっと遠慮がちに言ってみる。
 真砂はちらりと視線を上げると、深成の机にある書類を見た。

「今から会議だ。いつ終わるかわからんから、急ぎのものがあるなら、部長に頼め」

「ええっ。今からって、ご飯は? ご飯食べないと死んじゃうよ?」

「一食抜いたぐらいで死ぬのなんざ、お前だけだ。社会人には、ランチミーティングというものがある。覚えておくんだな」

「ランチミーティング? ご飯の会議?」

 きょとん、と首を傾げる深成に冷たい視線を残し、真砂はPCを閉じると、フロアを出て行った。

「いろんなご飯を食べられるのかなぁ。いいなぁ」

 真砂の後ろ姿を見送りながら呟く深成に、あきがお弁当を持って誘いにきた。

「何言ってるの。ランチミーティングっていうのは、お昼ご飯食べつつの会議よ。休めないから、面白くもないわよ。ただ、今回の会議はどうかしら。社長直々のお呼び出しのようだし」

 ブースでお弁当を広げながら、ふふふ、とあきが含み笑いする。

「え、課長、何かやらかしたの?」

 社長からの呼び出しなど、怒られること以外にあるのだろうか、と単純に思った深成だったが、あきは、ちちち、と指を振る。

「まさか。あの課長に限って、そんなヘマするわけないじゃない。それに何と言っても、課長は社長のお気に入りだしね」

 またもふふふ、とあきの目尻が下がる。
 深成はカニさんウインナーを齧りながら、眉間に皺を寄せた。

「確かに仕事は出来るけどさぁ。可愛くないじゃん」

「格好良いもの。仕事が出来て、頭も顔も良いなんて。そりゃ社長も可愛がるわけよね」

「社長って、女の人だったっけ。うわ、課長、女社長をたらしこんでるのっ」

「課長になら、たらしこまれてみたいわぁ〜」

 うっとりと、あきは視線を宙に投げる。
 深成は、そろ、とティッシュを用意した。