「お前が?」

 じろじろと、深成を上から下まで眺め、真砂は馬鹿にしたように、鼻で笑った。

「この家には罠がいっぱいだけどね、特にこの辺、真砂さんの部屋の近くは多いんだ」

「ええっ。何で?」

 そもそも何で家の中に、こんな罠があるのだ。
 深成は半泣きになって捨吉を見た。

「阿呆か。他人がこんな狭いスペースに暮らしてるんだぞ。てめぇの場所を確保し続けるためには、用心するに越したことはない」

 真砂が冷たく言う。

「もぅ真砂様。真砂様がちょいちょいお部屋の罠変えるもんですから、わたくし忍んで行くのも命懸けなんですのよ」

 先程枕を投げつけられただろうに、千代は真砂に擦り寄った。
 ちらりと深成は、真砂の背後、彼の部屋の中を覗き見た。
 見たところ、殺風景な部屋には、そんな恐ろしげな罠は見あたらない。

---まぁ、本気で命懸けになるような罠なんて、いくら何でも仕掛けないよね---

 ほ、と息をつき、深成は自分の部屋の扉を開けた。
 その途端。

「ひいいぃぃぃっ」

 どでかい木槌が降ってきた。
 どうやらドアを開けると落ちる仕掛けだったらしい。

 素早く飛び退って避けたが、背後は先程の穴が大口を開けている。
 必死で深成は、壁にしがみついた。

「ほほぅ。お前、なかなかやるな」

 真砂が楽しそうに言う。
 深成は、キッと真砂を睨んだ。

「な、何で人の部屋にまで罠仕掛けてんのさっ!」

「試作品だ。空き部屋だったからな。空いた部屋こそ、物騒だろ」

 さらっと言い、真砂は何か操作して、まず廊下の穴を閉じた。
 そして、ひょい、と深成の部屋の入り口に落ちている木槌を抱える。

 結構な重さのようだ。
 直撃したら、ただでは済まないのではないか。

「そんなの仕掛けるなんて、信じられないっ」

 ぶーぶー言いながら、深成は部屋に入る。

「あ、ちょっと」

 捨吉が止めようとしたときには遅く、びゅんびゅん、という風を切る音。
 慌てて捨吉が部屋を覗いてみれば、青い顔の深成が、身体を思いきりのけ反らせて固まっている。

「大丈夫かい? でも凄いねぇ」

 呑気に言いつつ、捨吉は深成を助け起こす。
 先の罠は、左右の壁から矢が飛び出してくるものだった。
 さほど太いものではなく、竹串程度の細いものだが、壁にはがっつり刺さっているのだ。
 しかも一本ではない。

 ちらりと背後を振り返ると、真砂がきらきらした目で見つめている。
 新しいおもちゃを見つけた子供のようだ。

 が、実態はそんな可愛いものではない。
 口元には悪魔の笑みが浮かんでいる。

 その深成の予感は見事に当たり、以来深成が帰るたびに、彼女の部屋には何らかの罠が仕掛けてあるのだった。

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 ああ、これはまだ入り口ですわ。
 だからまだまだ真砂も大人しい(←?)
 何故か真砂登場まで、えらい文字数をとってしまったので、まずはここまで。あきも全然だし。

 このシェアハウスバージョンは、続編……作るかな?続編に関しても、いろいろ意見を取り入れれば、また面白いかと思いますので、何かあったらどうぞ。

 小咄が進むにつれて、真砂の露出が増えていく気がしないでもない( ̄∀ ̄)

2014/03/11 藤堂 左近