さて、そんなこんなでいよいよ本日の最終種目。
 クラス対抗ハンティングリレー。

「うう〜……。怖いよぅ」

 柵の中で、深成が落ち着きなく歩き回っている。
 反対に、千代は嬉しそうに、いそいそと身だしなみチェック。

 午前中のリレーで濡れたから、という理由で、上着の裾を絞るように引き上げている。
 お陰でお腹が丸出しだ。

 しかも胸の下で裾を結んでいるので、胸の大きさが強調されている。
 ほとんどセパレートビキニ状態だ。

「千代ぉ。そんな格好してると、お腹壊すよぉ?」

 そういう深成は、午前中より厚着に見える。
 真砂の上着を着ているからだが、実はその下は下着である。
 真砂は気にしていないようだったが、やはりあの泥だらけの上に着るのは気が引けて、自分の体操服は脱いだのだ。

 体操服は、上も下も泥だらけだった。
 幸い真砂の上着は深成の膝上まであったので、下も脱いでしまった。
 その辺りは何も考えていない深成らしい。

「そんなヤワなお腹じゃないさ。うふふ、この格好で真砂先生に担がれたら、私の素肌が先生に……」

 うっとりと言う。
 聞いていてもよくわからないので、深成はまたその辺をうろうろしながら、スタート位置に目をやった。
 
 鉢巻をした真砂が、軽く足首を回しながら、スタート位置につくところだった。
 その手前には、六郎の姿。

「そういえば、六郎先生は、体力戻ったのかな?」

 お昼の時点では、まだ貧血気味のようだったが。
 だが今は、何か凄い闘志が感じられる。
 午前中のリレーのとき以上のようだ。
 深成はちょっと感心したように呟いた。

「六郎先生って、意外と熱い人なんだねぇ。お祭りに燃える人なのかな」

 何もわかっていない故の間抜けな発言に、コース横に控えていたあきは、ぷくく、と笑った。
 近いとはいえ、コースの外側だ。
 ぼそ、と言った言葉をキャッチする辺り、あきのアンテナはどの受信局よりも高性能だろう。