一瞬の静寂に包まれた後、どこからか拍手が聞こえ、それはすぐに輪のように広がっていく。

専務がどれほどの苦労をしてきたのか、私には計り知れないけれど……

彼の握りしめた手から、きっと今、色々な想いを噛みしめているのだろうということが伝わってくる。


大きな拍手が沸き起こる中、専務は凛とした表情で頭を下げた。

それは、とても綺麗な一礼で。

本当は自分も必要とされていて、感謝されていたのだと知った専務の、感無量な想いがこめられているような気がして、私の胸まで熱くなった。


その時、専務から少し離れた窓際に、九条さんがいることに気付く。

瞳を潤ませて、今にも泣きそうなのを堪えて専務を見つめている彼女を見た瞬間、つられて私の目にも熱いモノが込み上げてくる。


やっぱり九条さんも、ずっと専務のことを心から気にかけていたんじゃない。

やだなぁ、もう。私こういうの弱いんだから!

誰にも悟られないように、少し上を向いてなんとか涙を引っ込める。


……私、勝ち組の定義を間違えていたのかもしれない。

そもそも、社会的ステータスや恋人の有無だけで、勝ち負けを決めるのがおかしいんだ。

専務も九条さんも、そしてあの菅原さんも。完璧なように見えて、誰でも欠落した部分は必ずあるもの。

何の悩みもない、すべてを手に入れている人を勝ち組だとするなら、そんな人はこの世の中にどれだけいるのだろう──。