「椎名さん、これ終わったら人参の皮剥きもお願いします」

「了解」

「あっマネージャー、その鍋の火止めてください!」

「はいはい」



野菜の下処理やら洗い物やら、本当にがっつり雑用を任せてしまっているけれど、椎名さんは文句も言わず、嫌な顔一つせずにやってくれている。

余裕がある時には、丸石さん達と雑談を交わしながら、忙しい中でも和気あいあいとしたいい雰囲気で調理を進めた。



特別なトラブルもなく順調に進み、午後五時を過ぎた頃にはほぼすべての料理が出来上がっていた。


マリネやシーザーサラダ等のサラダ系と、パエリアや手の込んだカリフォルニアロール等のご飯系が三種類ずつ。

メインは定番の鶏のから揚げから始まり、高級感のある牛肉のステーキにサーモンのパイ包み、白身魚のアクアパッツァ。

そして、彩りも良く見た目も楽しい、ピザや海老のテリーヌ、クロスティーニ等の手で摘めるフィンガーフードが数種類。

女性には嬉しい、一口大のケーキやゼリー等のデザートもいくつか用意したし、野菜も肉も魚も、まんべんなく取り入れたつもり。


中でも水野くんお手製のローストビーフは、丸石さん達も絶賛するほどの出来だった。



「やるじゃん涼ちゃーん! これで汚名返上出来るね」

「まだそれを言うか、まこっちゃん」

「でも本当にこれは菅原さんも黙らせちゃえるわよ」

「フッ、反応が楽しみだな」



意地悪そうに片方の口角を上げる水野くんだけど、お願いだから問題起こさないでよ……。