「うまくいくかな……」



ぽつりとこぼれた私の言葉に、水野くんは菜箸で調味料を掻き混ぜながら軽く笑う。



「いつになく弱気じゃん。風邪のせい?」

「それもあるかもね……」



だけどそれより、請求書の件で自分の浅はかさが露わになって、自信を無くしてしまったせいの方が大きい。

しっかり確認したつもりでいるけれど、もしも何か忘れてしまっていたら、当日にミスをしたら……

そんな不安が次々と襲ってきて、どうしようもなく怖くなる。



「明日ぶっ倒れんなよー?」

「その時はよろしくね、涼太くん」

「こういう時だけ“涼太くん”とか言ったってダメだぜ」

「冗談よ」



軽く笑い飛ばして休憩室に戻ろうとすると、「ちづ」と水野くんが呼び止める。

ドアの手前で振り返ると、彼は私を安心させるような笑顔を見せて言った。



「大丈夫だよ。何かあっても皆でカバーすればなんとかなるって」

「……うん、ありがと」



水野くんのお気楽さというか、前向きさには少し助けられる。

でも、やっぱり今は不安が拭えない。どうしても悪い想像をしてしまうの。

どうしたのよ千鶴……こんなに弱気になってちゃ、本当に全部うまくいかなくなるわよ。


重い頭を抱えつつ請求書作りを再開するけれど、まだ終わりは見えない。

そんな私を心配しながらも、八時を回る頃にはさすがに水野くんも帰っていった。

『俺に手伝えるものなら手伝ってあげたいけど、ごめんな』なんて、優しい言葉を残して。