島渡り

「失礼します。」という声とともに入ってきた少女は、僕の顔を見ると、少しだけ表情を緩めた。

齢十五になる、とても美しい少女だった。

長い漆黒の髪を毎日綺麗に結い上げている。何の化粧をしなくても雪のように白い肌は、いつでも頬だけ薄桃色に染まっていた。
紅を控え目に乗せた唇も、筋の通った鼻も、伏しがちの水晶のような瞳も、全てが僕には美しく、また、なぜか恐ろしく思えた。
 
この島に来た時、僕に宿を与えてくれた少女であり、僕の世話をしてくれている。
無邪気な子供らしさを失わず、そして年齢以上の落ち着きも持つ。
 
出会った頃、僕が名を聞くと、彼女は時間をかけて笑みを作り、柔らかい声で言った。
 
「秘密です。お好きなように。」
 
僕は彼女を名で呼んだことがなかった。僕の勝手な思いで彼女を表すことは許されない。

だから、僕は僕なりの思いを込めて、彼女を「少女」と心の中で呼んでいた。