島渡り

そして、僕はこの島に来て最初の夏を迎えようとしていた。

この島ではたくさんの人たちと知り合うことができた。島民は皆気さくで、よそ者の僕にも優しくしてくれた。

泊まるところがなく困っていた際、少女が自分の祖父が住んでいたという家を貸してくれた。
なに不自由なく暮らせたのだ。

僕は幸せだったし、困ったこともない。

だから、この事態を恐れもしなかったし、この事態から逃げようとさえしなかった。
 
ある時、海辺でまだ二十歳になるかならないかの青年が、祈っていた。

青年は、正座をして、海に向って手を組み、目をつむり、それは真剣な表情で、ただ祈り続けていた。

手には貝でできた数珠が掴まれており、僕はそれが何となく気に食わなかった。
 
とりあえず、分かったのは、この島の人たちが祭るものは、従兄弟が信じ続けた神ではないということだ。