今は亡き従兄弟への未練と鮮明過ぎる記憶。
第二次性徴を迎える直前の少女に対する永遠的な崇拝。

この作品の主人公が望んだのは、「終わらないもの」、つまりは永遠でした。

亡くなってしまった従兄弟との思い出を少しも忘れることなく、また、島で出会った可憐な少女のことすらも忘却せぬように、紙にひたすら書き留める姿。
喪失を経て臆病になった彼は、「確かなもの」以外を信じられなくなりました。

彼のアフターデイズを書く気は、当時の私も今の私も、毛頭ありません。
この作品はどう締めくくってもハッピーエンドにはなりえないからです。

従兄弟への未練を断ち切れず、少女への恋慕も終わらぬまま、現実へと引き戻された彼。
もし彼に後日というものがあったとしても、きっとまた、叶わない恋をするのでしょう。

恐らく彼は、従兄弟が生きていた時から、夢と現の間でぼんやりと生きていたのでしょう。
まだ幼い少女へ向けて一方的な論説をし、果ては彼女へ愛の告白をし、結婚を前提として家へと連れ帰る計画まで立てる。

血縁関係にあり同性でもあった従兄弟へと恋をしたのも、仕事を選んだのも、島へとやって来たのも、すべて現実からの逃避だったのでしょう。

1番神聖な形で話を終える為に、彼はまた自分に言い聞かせるのです。

「彼女はまだどこかにいる」と。

勿論、いません。

彼女という存在は彼の記憶の中にしかいない。
白い十字架の下に埋められた従兄弟同様に、少女も既に亡者同様の扱いとなっているのです。

彼は再び、自分を納得させる為に逃避をするのです。
そして、その嘘を自分で見破ることができないように、辛くなった時はまた、神の島を訪れるのでしょう。