島渡り

日後。

「思いを寄せる人はいますか。」
 
僕の言葉に、少女は首を傾けた。少女のその仕草が表すのは、恐らく、唐突すぎた僕の質問に戸惑うと共に、僕の質問の意図が分からないというものだろう。
 
だが、暫く僕が書を書き記す間に、少女は顔を上げて、その問いの答えを探し出したようだ。
 
「おります。」
 
僕は、筆をまた置いて、少女と目を合わせる。

あの日、太陽へと数珠をかざす少女を見てから、僕にとっての少女が変わったように思えてならないのだ。

そして、少女を僕の近くに置いておきたいと思うようになっていた。
 
「どんな方?」
 
そう問うと、今度は彼女も問いの意味を深く考えることなく、そのままのことを口にした。
 
「ご自分のことだけを信じておられる、とても信念の強いお方でございます。

他の何かに縋ることなく、己の足で地を踏みしめる、誰よりも尊敬できるお方です。

そして、誰よりも賢しい方でいらっしゃいます。

私は、学もないため、よい話し相手にもなれないのですが、それでもそのお方のことをただひたすらに尊敬しています。」
 
僕は、書き物机を退けて、そこに彼女を招いた。
 
彼女は上品な仕草で立ち上がると、二歩、三歩歩いて、音を立てずに僕の前へと座った。