「はい」 莉歩は透き通るような声で返事をした。 ――さっきまでの弱々しい声とは違う。 まるで……もう、“諦めた”かのような………。 「歩行者信号は、青でしたよね?」 「はい、青でした」 「……そうですか。 で、南さんは男の子がひかれそうになってるのを見て ……助けようとして、ですよね?」 莉歩は頷いた。 俺の頭の中で、その時の映像が 鮮明に蘇ってくる。 「……何がどうであれ、あたしは……生きていたので、良かったです」 「………莉歩」 清々しい顔の莉歩を見ると、 もう何も言えなかった。