目が覚める。
小鳥のさえずりと、カーテンの隙間から差し込む柔らかい光。
今日も、こうして変わらぬ朝がやってくる。

カーテンを開ける。
まばゆい光に目を眇めながら、窓を大きく開け放した。


「うーん。」


満ち足りた気分で深呼吸をして、伸びをする。
朝の清々しい空気が、胸いっぱいに広がった。


「さて、今日も一日頑張るぞ!」


この一言が、私の活力源だ。

鏡を覗くと、ちょっとだけ寝癖のついた髪で、すっきりと笑う私がいた。
こんなふうに笑えるようになったんだなあ、と素直に感心する。


私は今、一人でフラワーショップを営んでいる。

大学を卒業したての頃は、全然違う職業だった。
でも、いろいろあって、ここにたどり着いて、私は幸せだと思っている。

私が生きる希望も、何もかも失ったとき、手を差し伸べてくれたのは……。


棚の上に飾ってある写真を見る。

私と彼女が並んで写っている。

そのころの私は、とっても不自然に笑っていた。

でもその横で、天使のように笑う人。
それはみどりさん。

みどりさんには、結局最後まで年齢を聞くことはなかった。

彼女は、長老のように何でも知っていて、それでいて時に少女のように振舞う、不思議な人だった。

私を、何も聞かずに雇ってくれた。


みどりさんがこの世を去ってから、あっという間に二年の月日が流れた。

いつの間にか、私はみどりさんの代わりに、店を守っている。


この穏やかな日々が、私の幸せだった。


思い出したくないことは思い出さないで、それでいて、幸せな思い出でその部分を埋めていく。

そんな日々に、私は満足していた。


少なくとも、満足していたつもりだった――