私は逃げたんだ。

傷つきたくなかった。

誰も傷つけたくなかった。


…けっきょく、今苦しんでるわけで。


たくさん嘘ついて、笑顔でとりつくろってきた現実。


翠の告白を断れなかったあの日。

律に好きだと言えなかったあの日。

…つらい恋の入り口に立ちたくなくて、楽な道を選んだ。


こんなの、ちっとも楽じゃなかったけど。



翠が好きって

律なんて、気になるけど、好きじゃないって


何度も言い聞かせて。



…何してきたんだろう、今まで。


もう戻れないのに。

何を今更。