すごくいい人だ、音さんは。 こんなにいい人なのに、青久はどうして好きにならなかったんだろう。 あたしたちはどうして、この人を不幸にしてしまったんだろう。 「その代わり、幸せになりなさいよ」 「はい…………」 「じゃあわたし、帰るから」 それじゃあね、と音さんは千円札を一枚テーブルに置いてお店を出て行った。 そしたらあたしは、なんだか涙がとまらなくなって。 静かに、あたしはその場で涙を流した。 ありがとう、音さん…………。