トクトクと、落ち着く鼓動の音。
懐かしい、温もり。
愛しい、声。
あたし達は、もう二度と出会うはずはなかった。
それは、決して許されないことだった。
――心の教育系。
任務を完了した今、シキと約束した通り、あたしは人間界へと戻された。
魔界での記憶を全て消されて。
本当ならば、魔界で過ごした時間はなかったことになる。
ルカや、シキ。
それにフランさんやチヅルさんの存在も知らないはずだ。
それなのに。
昨日、起きたときからずっと、何か引っ掛かるものがあって。
突然の転入生の姿を見た瞬間、息ができなくなった。
シキは、本当の力を出さなかったのだろうか。
わざと手を抜いて、あたしの記憶を消したの?
だって、有り得ないことでしょ?


