「佐藤くん、芹那さん準備してください」




まだ誰一人として納得してないのに勝手に始めようとする腹黒王子。
私と桃也に向けられる全校生徒の視線。




「こうなったら、仕方ないかな……芹那行こ?」




観念したように顔を歪めながら私の前に来て私の前に手を差し出す桃也。




「……え、やるの!?」





あんな茶番劇を……?
桃也を見ると上下に頷いていた。




え、桃也をダーリンって呼ぶの?
嫌なんだけど……。





「芹那さん、頑張って下さいね」




いきなり聞こえてきた腹黒王子の言葉に現実に引き戻されて私の手は腹黒王子の手によって桃也の手の上に重ねられていた。






何のスイッチが入ったのか知らないけど私をスタンバイ位置に立たせて二重箱を持ってることを確認すると白い椅子みたいな台の上に座って私を見る桃也。





「……では、START」




ムカつくほど発音のいい腹黒王子の声が聞こえてきて全員の目が私に向く。
重い足をゆっくりと動かして桃也の前まで行く。





「……どうしたの、芹那?」





「…………え、あっ……えっと」





さっきまであんなに嫌がってた人とは思えない程の桃也に挙動不信になってしまう。
桃也の目がチラリと腹黒王子の方に向くと桃也は小さく息を吐いていた。
な、なに……?





「それ、俺に?嬉しいよハニー」



「………………」




笑顔でそういう桃也に私が恥ずかしくなってしまった。
こいつ……言ったよ。
辺りからは女の子の悲鳴のような声が響きわたる。