「……芹那(セリナ)ちゃん!」



そんな大声で呼ばなくても聞こえるのに。
台所とリビングという位置的にはすごく近い位置にいるのに何故か大声を出して私を呼ぶお母さん。


「……何?」



我が家にある唯一の黒いソファーから体を起こして立ち上がり台所にいるお母さんちょっと、お話があるからそこ座ってくれる?」



お母さんは台所に置いてある食卓のところにある椅子に腰を下ろしながら私に自分の前に座るように勧めてくる。



この人のこの顔……何か企んでる時の顔だ。
半ニヤケ笑いを浮かべているお母さんの前の席に黙って腰を下ろす。



「……で、話って?」



「明日から、新しい学校に通ってもらうわ!」



――は?
何言ってんの、この人?
私、学校通ってるし無理でしょ。



目の前の人をただボーッと見つめているとまた、お母さんの唇が動く。



「今の学校は、今日で退学よ!ちゃんと理事長には言ってあったから」




「………………」




なんで、本人に知らせないで理事長に言うんだろう?
それに、私の意見も聞かずにこの母親は何勝手に決めてんの?
てか、理事長と今日すれ違ったのに何も言わなかったよ、あの人?




「芹那ちゃん、私はね……可愛い女らしい女の子に育てたつもりよ。……どこで間違えたのかと思ったわよ」




――間違えた?何を?




ほんとにこの母親は話が直ぐにどこかへ飛ぶから付いていけない……。





「私は……私は、こんなボーイッシュな男の子みたいな女の子に育てるつもりなんか……」




あぁ、私の性格のこと言ってんのかこの人は。
まぁ、育っちゃったもんは仕方ないよね。





「娘とするガールズトークも楽しみにしていたのよ、私は……」




ガールズトークね……。
そういえば、一回もしたことないかもな~。
お母さんに目を向けると何故か、目に涙を溜めて私を睨んでいた。




なんで?