昔砂浜で会った男の子が、一旦その場を後にいしていく後ろ姿が目の前に浮かんで見えた。


「まさか……あの時計って」


「あの時、俺が未玲にやった時計だ」


「うそ……!!」


そんなことすっかり忘れてしまっていた。


ずっとずっと大切に持っていたのに、それよりもっと大切な思い出を忘れてしまっていたなんて……。


情けなくて、あたしはまたジワリと視界がにじんでくるのを感じた。


「泣くなよ。思いだしたなら、それでいい」


そう言って、海都はあたしの体を抱き寄せた。


暖かな海都の体温にそっと目を閉じる。


このまま時間が止まってしまえばいいのに。


そう、感じていた……。