「海都にも見せてあげたいな……」


あたしはそう呟き、ポケットの中の短冊を取り出した。


叶うハズのない願いを海へと浮かべる。


このまま波に乗って海の中の天の川まで届けばいい。


年に一度でも愛し会う事のできるおり姫とひこ星が、今は少しうらやましいと感じる。


流れて行く短冊を見つめて、あたしはその場にしゃがみこんだ。


波の音が静かな夜に聞こえてくる。


あたしはそっと目を閉じて、幼い頃感じたあの手を思い出していた。


あれが海都じゃないとしたら、一体誰だったんだろう。


その人は今幸せだろうか。


その時だった。


ポンッと暖かな手があたしの頭に触れてあたしは驚いて目をあけた。