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「この出来事の覚え方は……」


海都が説明してくれて、あたしはそれをノートに書き写す。


あたしは時々、真剣な表情の海都の横顔を見つめる。


大切な個所を赤ペンで丸をする、その指先を見つめる。


どれもがあたしの心を掴んで離さない。


だから、あたしは途中から海都が自分の視界に入らないように、少しだけ体勢を変えた。


そうすれば意識しなくてすむと思った。


でも……。


見えなくなった海都の姿は、海都の声を意識させる要因になった。


低くて透き通った声。


この声で名前を呼ばれてドキッとした時のこと。