「お前1人?」


「え……?」


「スリッパ。お前のしかないじゃん」


あ……!


入り口に旅館のスリッパが脱げるようになっているのだが、そこにはあたしの分しかスリッパが置かれていない。


「万結は彼氏の所に行ったから」


「ふぅん……?」


「なによ。もういいでしょ? 部屋に戻りなよ」


「嫌だ」


「へ!?」


目を見開いた次の瞬間、海都はあたしを押しのけてズカズカと部屋へ入って来たのだ。