まるで好きな人を思い出しているような表情だ。


その子が、『みーちゃん』なの?


そう聞きたい気持ちをグッと押し込める。


海都がずっと好きな人。


その人がいるから、海都は誰とも付き合わない。


「あの子がいた時、俺すげぇ楽しかった」


海都がそう言い、あたしの周りにだけ生温かく湿った風が吹いて行った。


それ以上、聞きたくないな……。


自然と速足になっていく。


それに気づかず、海都は『みーちゃん』との思い出の話を進めていく。