結局、あたしは何も思い出すことができず、海都は寂しそうな表情を浮かべたまま脱衣所を出て行ってしまった。


下着姿を見られたショックよりも、海都の寂しい表情を見た時の方が胸が痛む。


広い浴槽に入り、ふぅと息を吐き出してもその痛みは消えなかった。


あたしは自分の胸にそっと手を当てる。


あたし、なにを忘れているんだろう?


海都は、どうしてあんなに悲しそうな顔をするんだろう?


「……わかんないよ……」


ただ胸が痛くて、あたしはキュッと胸の前で拳を握りしめたのだった。