「あのさ・・・ロルフ」

「何だ?」

「・・・黙っててくれるか?」


倉庫へと足早に向かうアレンが、静かに振り返った。

底知れぬ深い闇がアレンの瞳に浮かんでいる。




こんな目のアレンは初めてだった。




いや、もともとアレンは、厳しい顔つきをしている。

ナタリーには穏やかな眼差ししか向けないが、いつもはきつい目つきだ。



テニスの試合の時しかり。

勉強中しかり。



生真面目な性格を反映したような鋭い緑の目は、いつもぎらついている。

人を殺しそうな顔してる、と言ったのは、クラスメイトだったっけか。



とがり気味の顎や、きりりとした眉が、一層その印象をきつくしている。






ナタリーのクラスメイトであるチャールズは、「目が合っただけで殺されそうだ」とアレンのことを噂していた。


テニスの練習をさぼって、アレンに厳しく怒られた後輩は、いまだにアレンと口をきくのが苦手だという。




俺自身、ルームメイトになったときは、こんな怖い顔をしたヤツと一緒にやっていけるだろうかと本気で不安になった。




そう、根本的な部分で、アレンは殺気立った人間なのだ。