異世界で家庭菜園やってみた

「本気」。

そもそも、ヤンやマリュエルが求める本気とは、どんなものだ?

悠里は一人残された土間で頭を抱えていた。

マリュエルは仕事があると、鍛冶場に行ってしまった。

(待って。もう一度整理し直そう。わたしは何の為にここにいる?)

鍬を作ってもらうためだ。

(じゃあ、作ってもらって、何をするの?)

それは、もちろん家庭菜園だ。

(その家庭菜園は、誰の為?わたしの為?)

それも、ある。

けれど、それだけではなかった筈だ。

ディントの国王の頼みだから。

その頼みとは、ディントの国力を上げること。

ディントの国民に自給自足を知ってもらおうと、家庭菜園を始めることにしたのだ。

神殿の周りに広がっていた荒れ地。

何もない、不毛の大地。

それを見て、そこに緑を溢れさせたい。

人々が同じようにいろんな野菜を食べられるようにしたい。

そう思ったのではなかったか。

(忘れるところだった……)

家庭菜園への熱い思いを。

ディントを野菜でいっぱいにしたいと思った、あの時の気分の高揚を。



目に付いた色の悪い紙と羽ペンを持って、悠里は何かを書き殴り始めた。

文章はなく、絵だけ。

まるで鳥獣の戯画のようにも見える絵を書き上げると、悠里はそれを眺めながら、マリュエルが戻って来るのを待った。

鍛治場は神聖な場所。

そう聞いたことがあるから、そこに行くことは憚られ、土間の椅子に座って待つことにしたのだ。

そうやっているうちに、どのくらいの時間が経ったのだろう。

外はもう、日が赤く染まる時分になっていた。