異世界で家庭菜園やってみた

「とは言ったものの、わたしに出来ますかね。説得……」

悠里は商工会議所の建物を出た途端、弱音を吐いた。

それを聞いて、ウリエルはくすりと笑うと、「悠里なら出来るさ」と事も無げに言った。

「ウリエルさん。その根拠のない自信は、どこから……」

「じゃあ、どうしてユーリは出来ないって思うんだ?」

「そ、それは……。だって、わたしなんて……。ウリエルさんみたいに賢くもないし、喋るのも上手じゃないし」

もごもごと自分のだめな所を列挙する悠里を、ウリエルは呆れたように見た。

「自分を卑下し過ぎ」

悠里の頭をくしゃっと撫でると、ウリエルは彼女の顔を覗き込んだ。

「だめだって思うから、だめになる。自分はいける(・・・)って信じてごらん?そうしたら、自分でも思ってもみなかった力が出てくるから」

ウリエルの薄青色の瞳が優しく揺らめいた。

何だか、魔法に掛けられたような。

そんな不思議な心持ちになって、悠里は自分の心の中に、今まで感じたことのない感情が湧いて来るのを感じた。

ふつふつと。

そんな表現がしっくりくるような、静かな衝動。

「やりたいことがあるなら、全力でぶつかってみる。失敗したって、次があるだろ?俺が、ちゃんと後ろで見ててやるからさ」

「ウリエルさん……」

悠里は湧き上がる衝動に後押しされるように頷いた。

「よし。じゃあ、行こうか」

再び歩き出した二人。

悠里は一歩先を行くウリエルの背中を見つめていた。

こうやって後押ししてくれる人がいるということの心強さを、悠里は実感していた。

そのことが、こんなにも自分に勇気と力をくれるのだ。

悠里は歩きながら、ウリエルの存在に、何か特別な意味を見出そうとする己れの心の動きを自制するのに苦労していた。