話がひと段落した所で、悠里は庭に出た。
コウメさまにお茶の時間には戻っていらっしゃいと言われたが、半刻くらいなら土をいじれる時間がある。
ウリエルも少し仕事をするよと自室に戻って行ったから、悠里は一人だった。
木の棒で必死に耕した土は、黒い色を見せている。
そこから小さな虫が這い出して来たりして、春が近いことを窺わせた。
日本ではそろそろ夏野菜の準備だ。
この世界に夏野菜なんてあるんだろうかと思いながら、僅かに生えた雑草を抜き始めた。
「雑草とか生えるんだもん。土をちゃんと作ってあげたら、この国も野菜でいっぱいになるよ。絶対」
この国が実り豊かな国になって、皆が平等に野菜を食べられるようになったら。
この世界に来て良かったと思えるだろう。
コウメさまやウリエルさんみたいに力を貸してくれる人の為にも頑張るんだ。
そして、日本に戻る方法が見つかったら……。
見つかったら?
そう考えた時、悠里はふと草を抜く手を止めた。
(見つかったら、わたしは……)
日本に帰るのだ。
帰る?
本当に?
じっと土で汚れた手を見つめた。
爪の間に入り込んだ土は日本のものと何ら変わりなく、ここが異世界であることが不思議になるくらいだった。
文化や習慣が違うだけで、人の優しさも温もりも、そっくりなこの世界。
しかし悠里は異世界の人間。
方法さえ分かれば、いつかはここを離れる日が来るのだ。
土をひと掬い手に取った。そしてさらさらと零す。
痩せていて、乾いている土。
砂埃が舞って、悠里は少し咳き込んだ。
でも、きっと生まれ変われる。
美味しい野菜が育つ土にきっとなる。
(今は日本に帰ることを考えないで、目の前のやらなければならないことだけを考えよう)
自分の中に、日本に帰りたくないと思う気持ちを見つけてしまって、悠里は戸惑っていた。
だから、とりあえず精一杯のことをやろうと決めた。
人付き合いも、恋も、勉強も。
中途半端で終わらせてばかりの自分だから。
これは最後までやり遂げたい。
自分に出来る精一杯。
この国にたくさんの野菜が実るようになった時、自分自身も変わっていたいから……。
コウメさまにお茶の時間には戻っていらっしゃいと言われたが、半刻くらいなら土をいじれる時間がある。
ウリエルも少し仕事をするよと自室に戻って行ったから、悠里は一人だった。
木の棒で必死に耕した土は、黒い色を見せている。
そこから小さな虫が這い出して来たりして、春が近いことを窺わせた。
日本ではそろそろ夏野菜の準備だ。
この世界に夏野菜なんてあるんだろうかと思いながら、僅かに生えた雑草を抜き始めた。
「雑草とか生えるんだもん。土をちゃんと作ってあげたら、この国も野菜でいっぱいになるよ。絶対」
この国が実り豊かな国になって、皆が平等に野菜を食べられるようになったら。
この世界に来て良かったと思えるだろう。
コウメさまやウリエルさんみたいに力を貸してくれる人の為にも頑張るんだ。
そして、日本に戻る方法が見つかったら……。
見つかったら?
そう考えた時、悠里はふと草を抜く手を止めた。
(見つかったら、わたしは……)
日本に帰るのだ。
帰る?
本当に?
じっと土で汚れた手を見つめた。
爪の間に入り込んだ土は日本のものと何ら変わりなく、ここが異世界であることが不思議になるくらいだった。
文化や習慣が違うだけで、人の優しさも温もりも、そっくりなこの世界。
しかし悠里は異世界の人間。
方法さえ分かれば、いつかはここを離れる日が来るのだ。
土をひと掬い手に取った。そしてさらさらと零す。
痩せていて、乾いている土。
砂埃が舞って、悠里は少し咳き込んだ。
でも、きっと生まれ変われる。
美味しい野菜が育つ土にきっとなる。
(今は日本に帰ることを考えないで、目の前のやらなければならないことだけを考えよう)
自分の中に、日本に帰りたくないと思う気持ちを見つけてしまって、悠里は戸惑っていた。
だから、とりあえず精一杯のことをやろうと決めた。
人付き合いも、恋も、勉強も。
中途半端で終わらせてばかりの自分だから。
これは最後までやり遂げたい。
自分に出来る精一杯。
この国にたくさんの野菜が実るようになった時、自分自身も変わっていたいから……。