アシュラムが去ってしばらくして、下草を踏む音が聞こえて、悠里は顔を上げた。
目の前にいたのは、ウリエルだった。
「ウリエルさん……」
悠里の泣き笑いのような表情に、ウリエルの顔が曇る。
「アシュラムは入って来たのに、なかなか来なかったから、心配になったんだ。あいつに、何か言われたか?」
けれど悠里はふるふると首を横に振った。
「何も。でも、何だかよく分からなくて……。アシュラムさんが何を考えてるのか、全然分からなくなっちゃった。仲直り、出来ると思ったのになあ」
「……あいつは……言葉の足りないところがあるからな」
「え?」
ウリエルは悠里のもたれる幹に、自分も寄り掛かった。
「お祖母さまがよく言ってる。神殿という閉鎖空間で過ごして来て、あいつは人との関わりが少なかったからって。召喚魔法を使える貴重な人材ってことで、付き合う人間を制限されてきたみたいだから、経験値が少ないんだよな。王宮にいれば経験出来るようなことも、あいつは出来ない環境にいた。だから、思うように自分の気持ちを話せなかったり、人の気持ちを汲み取ることが下手だったりするんじゃないかって。だから、お祖母さまは、あいつの事を何かと気にかけて邸に招いたりしてやってるんだ」
「……そう、なんだ」
「なかなかいないよ。あいつみたいな境遇の奴は。だから、こちらも戸惑うこともある。けどユーリは、あいつにとって、心をさらけ出せる相手なんじゃないかな」
「……」
「だから、つい色んな胸の内を吐露してしまって、余計に伝わりにくくなってしまう。ユーリに全部を受け止めろなんて言えないけど、見捨てないでやってほしい。って、俺もあいつの事をよく知ってるわけじゃないけど、分かるんだ。これだけは。あいつはユーリに心を許してるよ」
「わたし、アシュラムさんに何もしてあげてないのに」
「理屈じゃないんだよ。人が人に心を開くって。ユーリだってそうだろう?お祖母さまのことは信頼してるんじゃないか?」
悠里はこくりと頷いた。
同じ被召喚者としてだけでなく、コウメさまの人柄に全面的な信頼を寄せているのは確かだった。
「じゃあ、わたし、アシュラムさんに何をしてあげればいいの?」
「……何も。ただ寄り添ってあげるといい。あいつは孤独なんだよ、ユーリ。その孤独を癒してやれるのは、お前だけだ」
目の前にいたのは、ウリエルだった。
「ウリエルさん……」
悠里の泣き笑いのような表情に、ウリエルの顔が曇る。
「アシュラムは入って来たのに、なかなか来なかったから、心配になったんだ。あいつに、何か言われたか?」
けれど悠里はふるふると首を横に振った。
「何も。でも、何だかよく分からなくて……。アシュラムさんが何を考えてるのか、全然分からなくなっちゃった。仲直り、出来ると思ったのになあ」
「……あいつは……言葉の足りないところがあるからな」
「え?」
ウリエルは悠里のもたれる幹に、自分も寄り掛かった。
「お祖母さまがよく言ってる。神殿という閉鎖空間で過ごして来て、あいつは人との関わりが少なかったからって。召喚魔法を使える貴重な人材ってことで、付き合う人間を制限されてきたみたいだから、経験値が少ないんだよな。王宮にいれば経験出来るようなことも、あいつは出来ない環境にいた。だから、思うように自分の気持ちを話せなかったり、人の気持ちを汲み取ることが下手だったりするんじゃないかって。だから、お祖母さまは、あいつの事を何かと気にかけて邸に招いたりしてやってるんだ」
「……そう、なんだ」
「なかなかいないよ。あいつみたいな境遇の奴は。だから、こちらも戸惑うこともある。けどユーリは、あいつにとって、心をさらけ出せる相手なんじゃないかな」
「……」
「だから、つい色んな胸の内を吐露してしまって、余計に伝わりにくくなってしまう。ユーリに全部を受け止めろなんて言えないけど、見捨てないでやってほしい。って、俺もあいつの事をよく知ってるわけじゃないけど、分かるんだ。これだけは。あいつはユーリに心を許してるよ」
「わたし、アシュラムさんに何もしてあげてないのに」
「理屈じゃないんだよ。人が人に心を開くって。ユーリだってそうだろう?お祖母さまのことは信頼してるんじゃないか?」
悠里はこくりと頷いた。
同じ被召喚者としてだけでなく、コウメさまの人柄に全面的な信頼を寄せているのは確かだった。
「じゃあ、わたし、アシュラムさんに何をしてあげればいいの?」
「……何も。ただ寄り添ってあげるといい。あいつは孤独なんだよ、ユーリ。その孤独を癒してやれるのは、お前だけだ」


