異世界で家庭菜園やってみた

嫌がらずに付いて来てくれる。

そのことだけで、アシュラムは十分だった。

拒否されてしまったらそこで終わりだが、まだ彼女の心に寄り添える余地があるのだと信じてもいいだろうか。

アシュラムは傍らを歩く悠里を盗み見た。

数日前と変わりない悠里の表情にほっとして息をついた。

喧嘩別れのようになってしまったことに、どれだけ己れの不甲斐なさを責めたか。

けれど、数日、間を置いて正解だったと、今なら思える。

その間もう一度自分の思いを見つめ直せたからだ。

この機会を無駄にしたくはない。

アシュラムはそっと悠里の手を取った。

最初のように。

最初からやり直すために。

彼女をエスコートする。

彼女の手が触れた途端、アシュラムの心が震えた。

(この手の温もりを自分の物にしたい)

それは、彼の抑制された半生で、初めて自ら欲したものだった。

そうしてアシュラムは悠里を外務部の庭へと導いた。

その二人の姿を窓越しに、ウリエルが追っていることなど露とも知らずに。