「な、何するんですか?」
「顔、上げた方が可愛いぞ。むっつり黙って俯いてるのは、気難しい政治家だけで十分だ」
ウリエルの手は、悠里の頭を容易に掴めそうなくらい大きかった。
そんな彼の手の温もりを頭全体で感じて、気持ちが軽くなっていく。
(ウリエルさんて、不思議な人だ。他人のことなんて気にしてなさそうなのに、本当は凄く敏感で、凄く気にしてくれる)
それも日本人ぽいところ?
彼の中の日本人の血が、彼にそんな細やかな部分を与えているのだろうか。
コウメさまがいて、サベイル卿がいて、そしてウリエルがいる。
その偶然に居合わせた自分は、とても運が良かったのだと、悠里は思わずにはいられなかった。
「ありがとう、ウリエルさん」
「兄ちゃんはもういいのか?」
「ふふ。うん。たぶん、大丈夫。でも時々はウリエルさんにお兄ちゃんを求めてしまいそうだけど……。でも、きっと友達でいた方がいいんだよね。わたしのお兄ちゃんは、日本にいるお兄ちゃんだけだもん。ウリエルさんは、お兄ちゃんじゃなくって、友達だよね」
不意にウリエルが悠里の頭を引き寄せた。
ウリエルの逞しい胸に、悠里は顔からもろに飛び込んでしまった。
「ウ、ウリエルさん!?」
動揺して上ずった声を上げる悠里の後頭部を、ウリエルは宥めるようにゆっくり撫でている。
その撫で方は、まるで泣いている幼子をあやしているようだった。
「辛い時は辛いって言えばいいんだ。一人で抱え込むなよ。俺が受け止めるから。お前の寂しさも、悲しさも全部、俺が一緒に感じてやるから。な?」
悠里はウリエルの服をぎゅっと掴んだ。
そうして力を入れないと、声を上げて泣き出してしまいそうだったからだ。
何度も何度もウリエルの手が悠里の頭を撫でてくれる。
それにつれて、悠里の心の中の凝り固まっていたある一部分が、次第に溶け出して行くような気がした。
まるで雪解けのように。
長年降り積もって固まってしまった雪が、美しい色彩を帯びながら溶けていくように。
悠里の心が溶けていく……。
「顔、上げた方が可愛いぞ。むっつり黙って俯いてるのは、気難しい政治家だけで十分だ」
ウリエルの手は、悠里の頭を容易に掴めそうなくらい大きかった。
そんな彼の手の温もりを頭全体で感じて、気持ちが軽くなっていく。
(ウリエルさんて、不思議な人だ。他人のことなんて気にしてなさそうなのに、本当は凄く敏感で、凄く気にしてくれる)
それも日本人ぽいところ?
彼の中の日本人の血が、彼にそんな細やかな部分を与えているのだろうか。
コウメさまがいて、サベイル卿がいて、そしてウリエルがいる。
その偶然に居合わせた自分は、とても運が良かったのだと、悠里は思わずにはいられなかった。
「ありがとう、ウリエルさん」
「兄ちゃんはもういいのか?」
「ふふ。うん。たぶん、大丈夫。でも時々はウリエルさんにお兄ちゃんを求めてしまいそうだけど……。でも、きっと友達でいた方がいいんだよね。わたしのお兄ちゃんは、日本にいるお兄ちゃんだけだもん。ウリエルさんは、お兄ちゃんじゃなくって、友達だよね」
不意にウリエルが悠里の頭を引き寄せた。
ウリエルの逞しい胸に、悠里は顔からもろに飛び込んでしまった。
「ウ、ウリエルさん!?」
動揺して上ずった声を上げる悠里の後頭部を、ウリエルは宥めるようにゆっくり撫でている。
その撫で方は、まるで泣いている幼子をあやしているようだった。
「辛い時は辛いって言えばいいんだ。一人で抱え込むなよ。俺が受け止めるから。お前の寂しさも、悲しさも全部、俺が一緒に感じてやるから。な?」
悠里はウリエルの服をぎゅっと掴んだ。
そうして力を入れないと、声を上げて泣き出してしまいそうだったからだ。
何度も何度もウリエルの手が悠里の頭を撫でてくれる。
それにつれて、悠里の心の中の凝り固まっていたある一部分が、次第に溶け出して行くような気がした。
まるで雪解けのように。
長年降り積もって固まってしまった雪が、美しい色彩を帯びながら溶けていくように。
悠里の心が溶けていく……。


