異世界で家庭菜園やってみた

悠里たちが部屋を辞したあと、サベイル卿は深いため息をついた。

「この国は弱い。指で押せば倒れそうなくらい脆弱だ。強くならなければ、な。私の娘(・)のように……」

一見すると、華奢で、か弱そうに見える悠里。

だがその実、内面に太くて強い柱が一本立っているかのようだ。

少々の風ではびくともしない、あの強さを信じたい。

(ああ。あれと同じ強さを持つ人を、私はもう一人知っている……)

サベイル卿は椅子に体を預け、瞼を閉じた。

その瞼の裏に浮かんでいるのは、彼の母である、コウメさまだった。

(我々が家族として出来るのは、あの子が少しでも心安らかに過ごせるようにと気を配ることだけだ。心の中の柱が折れることのないように。……それが、この国の為に彼女を呼んだ、我々の責務でもあるのだから)

この世界での父として。

そして、召喚者の立場の政治家として。

サベイル・デュ・ロンドベル外務卿は、この日より、悠里の庇護者の一人となった……。