異世界で家庭菜園やってみた

「何かあれば、このウリエルに言うといい。何分私はこの外務部に住んでいるようなもので、邸にはほとんど帰らないからね」

「お気遣い、有り難うございます。でも今は本当に不自由なく生活させて頂いてますから大丈夫です。コウメさまとお話しするようになって、大分気持ちも落ち着いたし。ウリエルさんも、とても親身になってくれるから、本当に有り難いです」

「そうか……。我らには、あなたと同じ血が流れている。母がこの世界に来なければ、私もウリエルもこの世界に生まれることはなかった。あなたにも会うことはなかった。なんと不思議な巡り合わせであろうか。こうしてこの世界で出会ったからには、我らはあなたに助力を惜しまない。どうか、この世界での家族と思って、隔てなくいてくれるように願っている」

「……」

悠里の胸がジーンと熱くなった。

(すっごい、いい人じゃん)

ちっとも鬼畜なんかではない。

悠里はすっかり真に受けていたけれど、もしかすると、あれはウリエルの冗談だったのだろうか。

「本当に有り難うございます。家族だなんて言ってもらえて嬉しいです」

「ああ。となれば、ウリエルはあなたの兄だな。しっかり甘えなさい」

「え、お兄さん?」

悠里は思わず、隣に座るウリエルを見た。

彼はなんとも言えない複雑な表情で、悠里を見つめ返している。

「お兄さん……か」

「ああ……。らしいね」

すっと肩をすくめたウリエルに、父であるサベイル外務卿はふっと笑うと、
「お前には兄弟がないから丁度良かったではないか?可愛い妹が出来たのだからな」
と半分からかうように言った。

「ええ、そうですね。嬉しいですよ。妹が出来て」

何故かウリエルはやけっぱちのように思える。

「あ、あの。妹のようなもので、本当に妹じゃないから、あんまり気を遣わないでくださいね」

思わず、そう言ってしまったほど、ウリエルは、迷惑そうに見えたのだ。

「……ああ、そうだね。それより、外務卿。例の話のご返答をお願い出来ますか?」

「例の話?」

「ああ。君が鉄製品を輸入したいって言った話だ」

「あ……」

「今日はその話をする為に来たんだろ?」

「そう、でした……」

サベイル卿の家族認定に舞い上がって、肝心の話をすっかり忘れていた。