異世界で家庭菜園やってみた

それから事態は急速に動いた。

三日後には、ウリエルの父である外務卿から、直接話を聞きたいとのお達しがあり、悠里はウリエルと共に外務部のある宮殿まで赴いた。

出掛ける前に、コウメさまから、「実の息子だけど、底の見えない怖ろしい所のある子だから油断は禁物よ」と両手を握られて諭された。

(まさか)と思いながらウリエルを見ると、「いや。冗談でなく本当なんだ」と苦々しげに言われてしまった。

二人がそうまで言うなら、そうなのかも知れないが、親と子にここまで言われる外務卿っていったい……と、悠里は内心不安を禁じ得なかった。

「じゃあ、行こうか」

ウリエルはいつものラフなシャツではなく、きっちりとした正装を着ていた。

華美な装飾はないものの、黒地に金の糸で刺繍がしてあって、一見して高価だと分かる。そして、その長身を覆うように、服と同色のマントを羽織っていた。

その抑えたお洒落が、ウリエルにとてもよく似合っていて、素敵だった。

(はあ。この世界で何が良かったって、目の保養に困らないのが一番良かったわ)

それは裏を返せば、そんなことくらいしか、心ときめくことがないということだが、悠里は敢えてそこには触れないことにした。

その日の悠里の衣装も、一応外務部への公式な訪問だからということで、国王に謁見して以来の正装だった。

胸を強調し過ぎないデザインはもはや悠里の鉄板だったが、その分今回はウエストのくびれが目立っている。

「あら。そのくらいしなくては。若いんですもの」

悠里よりも遥かに気の若いコウメさまにごり押しされ、しぶしぶこのドレスを着たのだが、悠里としては、ゆるふわなワンピースが着たかったのだ。

日本人体系な上に小柄な自分には、体型が分かってしまうデザインは向かないと知っているのだから。

けれど、コウメさまは「よく似合う〜」と少々はしゃぎ気味だ。

(ほんとにこの人、八十過ぎてらっしゃるのかな……)

内心疑いを抱いてしまうほど、キャピキャピしていた。

当の悠里は、思い切り渋い表情であるにもかかわらずだ。

「ねえ、ウリエル。ユーリはどこに出しても恥ずかしくない令嬢ね」

不意に振られたウリエルは微妙な顔をしていた。

(ですよね……。困りますよね……。)

「俺は、土いじってるユーリの方がいいですけど」

(え!?)

思わぬ言葉に、大きく跳ねた心臓。

「あら、あら。それは、わたくしもそうですよ」

ほほほとコウメさまは暢気に笑っている。