異世界で家庭菜園やってみた

「ああ。そうだよ。鉄は隣国リュール王国のみで採掘される貴重な鉱物だ。ここにある鉄製品は全て、リュール王国から仕入れたものだろうね」

「そっか。鉄はあるんだ。鉄で、鍬を作れたら最高なんだけどな……」

木で作ってもいいけれど、木こそ、このディントにとっては貴重なものだろう。

神殿を守るようにして鬱蒼と茂っていた木々も、この王都ではあまり見ない。

この偏りの多いディントという国は、本当に薄い基盤の上に立つ、危うい国だと思うのだ。

だから、何とかリュール王国の鉄製品を輸入出来れば……。

この国の人は、もっと気軽に家庭菜園が出来るようになる!

その為には、ウリエルの立場と力が必要だった。

「ウリエルさん。お話があります」

急に威儀を正した悠里に破顔したものの、ウリエルはすぐに表情を引き締め、「何かな?」と自分よりもずっと年下の少女の話を聞こうとしてくれた。



そして……。

重い石灰を一袋。抱えてコウメさまの屋敷に戻ったウリエルは、祖母に挨拶する間も惜しんで、また出掛けて行った。

「せっかく腕によりをかけてお昼を作っていたのに。ウリエルったら、つれないわね」

庭の痩せた土に石灰を撒く悠里の側で、コウメさまは延々孫の愚痴を言っていた。

そんな話、真剣に土作りに励む悠里は、全く聞く耳持たずだったのだけど……。

コウメさまもそんな悠里を気にすることなく愚痴り続けていた。