食堂は案外さっきまでいた部屋のすぐ近くにあって、だだっ広い中に、たくさんの長机や椅子が所狭しと並べられていて、まさに食堂(・・)と言った趣だ。

その、あり過ぎるくらいの机の一つに、申し訳程度に悠里たちの食事が並べられていた。

豪華、とは言えない食事だった。

建物もお城っぽいし、侍女がいたり、ドレスを着させられたりで、宮廷料理と呼ばれる物をほんの少し期待していたのだが、用意されていたのは、スジの多い肉が浮かんだスープと、イーストを使っていないらしい膨らみの悪い固いパン、そして果物が三種類程という、志田家の家庭料理の方がまだマシと思われるような料理だった。

(わたしが貧乏性だからかな……)

豪華な料理という物を想像する力が枯渇しているのかも。

夢の中であっても不甲斐ない自分に、悠里はげんなりした。

それに、気になったのは料理のことばかりではない。

「あの、他には誰もいらっしゃらないんですか?」

広い食堂に、ぽつんと二人だけ。

何となく心細い。

晩餐というのなら、もっと盛り上がっているのかと思っていた。

「ええ。他の者は、すでに食事を済ませているんです」

アシュラムは申し訳なさそうに目を伏せた。

「アシュラムさんの他には、どんな人がいるんですか?」

「……さまざまなことは後でお話ししようと思っていたのですが……。こんな、お食事の時でもよろしいですか?」

「は、はあ、いいでふよ」

悠里はちょうど固いパンにかぶりついたところだった。

どうしても噛み切れず苦闘していると、アシュラムに笑われてしまった。

「ああ。そのパンは、スープに浸して食べるといいんですよ」

なるほど。

その手があった。

それでも、スープに長い間浸さなければ柔らかくはならない。

悠里はしばらくお預け状態で、アシュラムの話を聞くことになった。

そして遂に悠里は、今自分の置かれている状況を、夢ではなく現実に起こっているのだと認めざるを得なくなってしまったのだった。