私のお人形

「あ、あの…」

私は勇気を振り絞って神主を呼び止めた。

今まで黙っていた私が声を上げたことに大人たちが驚いているのが分かった。

「人形御殿には鍵とかかけるんですか?」

「え?」

神主が驚いたような顔で私を見つめる。

私はとっさに口からでまかせを言った。

「いえ、人形を盗む人がいたら困るって思ったので…」

私の言葉を聞くと神主の顔がゆるんだ。

ほっと胸をなでおろしているのだろう。

「そうですか。お嬢さん、それを心配してたんですね」

私はどんな顔をしたらよいかわからなかった。

私が心配しているのは、セーラが大祭を前に人形御殿から逃げ出すことだから。

思わず視線をそらす。

「大丈夫ですよ。ちゃんと厳重に鍵をかけますから。盗まれたりすることはありませんからね」