夏目が篠原さんと交際しているといううわさが流れ始めたのは、ちょうどそのころだった。
「詩織……。」
智がしょんぼりした声で、私を呼ぶ。
何が言いたいか分かるから、私も同じ気持ちだから、お願いだからそれ以上何も言わないでほしい。
「夏目先生の好きな人って、ほんとに篠原さんだったんだね。」
「そうみたいだね。」
「でも私、それでもまだ、夏目先生のこと好きだよ。ほんとに、本気で好きだよ。」
「うん。」
「負けない。私絶対負けない。」
智は強い。
私とは比べ物にならないほど強い。
私は少し、智がうらやましかった。
私は夏目を裏切った。
だから、夏目に文句なんて言えない。
そもそも、私は夏目が好きだけれど、夏目にとって私はただの一人の生徒にすぎないのだから。
「ねぇ、智。」
「ん?」
「私、別れたよ。」
「えっ!!どうして。」
目を丸くした智に、一瞬本当のことを伝えようかと思った。
でも臆病な私は、一瞬のちにはもうやめてしまった。
「なんか違うな、って思って!」
「そうなんだ。もったいないなぁ。」
素直に納得する智は、私の何倍も純粋な生き物だと思った。
私はもう二度と、その純粋さを手に入れることはできない。
後悔ばっかりして、結局また繰り返して。
もう夏目に近づく資格さえ、私にはない―――
「詩織……。」
智がしょんぼりした声で、私を呼ぶ。
何が言いたいか分かるから、私も同じ気持ちだから、お願いだからそれ以上何も言わないでほしい。
「夏目先生の好きな人って、ほんとに篠原さんだったんだね。」
「そうみたいだね。」
「でも私、それでもまだ、夏目先生のこと好きだよ。ほんとに、本気で好きだよ。」
「うん。」
「負けない。私絶対負けない。」
智は強い。
私とは比べ物にならないほど強い。
私は少し、智がうらやましかった。
私は夏目を裏切った。
だから、夏目に文句なんて言えない。
そもそも、私は夏目が好きだけれど、夏目にとって私はただの一人の生徒にすぎないのだから。
「ねぇ、智。」
「ん?」
「私、別れたよ。」
「えっ!!どうして。」
目を丸くした智に、一瞬本当のことを伝えようかと思った。
でも臆病な私は、一瞬のちにはもうやめてしまった。
「なんか違うな、って思って!」
「そうなんだ。もったいないなぁ。」
素直に納得する智は、私の何倍も純粋な生き物だと思った。
私はもう二度と、その純粋さを手に入れることはできない。
後悔ばっかりして、結局また繰り返して。
もう夏目に近づく資格さえ、私にはない―――