とぼとぼと家に帰り、玄関のドアを開けると、叔母がなにやら慌てていた。
「ただいま。」
わざと気付いていないふりをする。
叔母が私に内緒で何かをするのは、いつものことだった。
いちいち確かめずに部屋に逃げ込もうとしたとき、私は気付いてしまった。
「叔母さん、それっ……。」
優香が着ているのは、私のワンピースだった。
ううん、違う。
正確に言えば母のもの。
私と体型が似ていた母は、私が気にいると服を譲ってくれていたのだ。
私が持っている、唯一のお気に入りの洋服。
「あ、ごめんね、詩織ちゃん。でももうこんなの詩織ちゃん着ないでしょ。優香に譲って……」
「嫌っっ!!!」
私の中で何かがはじける音を聞いた。
私は、泣き出す優香から無理矢理服を奪い返した。
「何するのっ、詩織!」
「嫌!どうしてそっとしておいてくれないの。どうしてお母さんの……」
「姉さんはもう死んだの。あなたのお母さんは私!誰が今まで養ってきたと思ってるの?」
叔母が私に対して、初めて怒鳴った。
確かに、確かにそうだ。
母を亡くしてから3年以上叔母夫婦のもとでお世話になっている。
本来ならそんな必要はなかったのに。
私は、叔母にとっても、邪魔な存在なのに。
でも、どうしても、どうしても許せなかった。
私の母は、死んでしまった、私が死なせてしまったお母さん、ただ一人だ。
両手で握りしめたワンピースとともに、私は家族に背を向けた。
誰一人として理解者でない家族に。
「ただいま。」
わざと気付いていないふりをする。
叔母が私に内緒で何かをするのは、いつものことだった。
いちいち確かめずに部屋に逃げ込もうとしたとき、私は気付いてしまった。
「叔母さん、それっ……。」
優香が着ているのは、私のワンピースだった。
ううん、違う。
正確に言えば母のもの。
私と体型が似ていた母は、私が気にいると服を譲ってくれていたのだ。
私が持っている、唯一のお気に入りの洋服。
「あ、ごめんね、詩織ちゃん。でももうこんなの詩織ちゃん着ないでしょ。優香に譲って……」
「嫌っっ!!!」
私の中で何かがはじける音を聞いた。
私は、泣き出す優香から無理矢理服を奪い返した。
「何するのっ、詩織!」
「嫌!どうしてそっとしておいてくれないの。どうしてお母さんの……」
「姉さんはもう死んだの。あなたのお母さんは私!誰が今まで養ってきたと思ってるの?」
叔母が私に対して、初めて怒鳴った。
確かに、確かにそうだ。
母を亡くしてから3年以上叔母夫婦のもとでお世話になっている。
本来ならそんな必要はなかったのに。
私は、叔母にとっても、邪魔な存在なのに。
でも、どうしても、どうしても許せなかった。
私の母は、死んでしまった、私が死なせてしまったお母さん、ただ一人だ。
両手で握りしめたワンピースとともに、私は家族に背を向けた。
誰一人として理解者でない家族に。