生物の授業の時、たまに夏目と目が合ってしまう。

そんな時、さっと逸らされるのが、たまらなく悲しい。


でもどうしても、関わらなくてはならないときがある。

それは教科担任であり、担任だから。


「小倉。」


授業の後硬質な声で呼ばれる。


「はい。」

「今日、放課後に職員室に来てくれるか。話がある。」

「分かりました。」


敬語で答える。

夏目が遠くに遠くに行ってしまった気がした。


何もかも、無かったことになってしまうのかな。

今までの夏目の優しさも、何もかも。


どんな弁解も、今の夏目の耳には届かないだろう。

なぜなら、夏目の愛する人は、私ではなく篠原さんだから。


篠原さんだけだから―――