(ーーーそうか………)





眉根を寄せ、チキュの顔を見下ろす。




その顔は、どこか苦し気に歪んでいた。






(………今まで何も訊いて来なかったが、やはり気にしていたんだな)






考えてみれば、幼い頃から世話をしてくれた男と、兄弟のように育った少年とを、二人同時に奪われたのだ。




その心の傷は、タツノには計り知れないほど大きく深いものであるはずだ。





しかしこの娘は、そんな哀しみは微塵も見せずに、明るく振る舞っていたのだ。







そう思って、その健気さに、タツノの胸の奥が引き絞られたように痛んだ。