天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

しかし宴までの時間が差し迫っているのに気がつき、タツノは足を踏み出した。




その足音にも気づかず、チキュはぼうっと野菜を見つめ続けている。





隣に立ち、「アカネ」と言った。






しかし反応がない。



まだ新しい名に慣れていないのかと、もう一度声をかける。






「………おい、アカネ」





軽く背中に触れるようにすると、ぴくりと肩を震わせて顔を上げた。






もしかしたら泣いているのかもしれないと思ったが、チキュの大きな黒瞳は乾いていた。






「タツノ………」




夢の中にいるような小さな声で、チキュが囁いた。



タツノは優しく問う。





「どうした?」





しかしチキュはふいと目を逸らし、「なんでもない」と呟いた。