天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

タツノはしばらく当てもなくソガノの中をうろついていたが、なかなかチキュは見つからなかった。





ソガノの区域の端、他家との境まで行ったが、そこには十人近い衛兵が立っており、誰一人チキュを見た者はなかった。




なので、やはりソガノの内にいるのだろうと思われた。






あいつが行きそうな場所はどこだろう、と考える。



食いしん坊な奴のことだからと目星を付けたのは、厨所だった。





その読みは正解で、厨房の近くにある倉庫の前に、チキュは佇んでいた。




音が届かない程度に離れた所でその姿に気がつき、タツノは声をかけようと足を早めたが、ふと思い留まった。





チキュは首を傾げて視線を落とし、何をじっと見ているようだったからだ。





何を見ているのだろうと目を凝らすと。



その足下には、地国から届いたらしい、緑や赤や黄など、色とりどりのものが詰まった麻袋が置かれていた。




たしか、野菜と呼ばれるものだ。






それを眺めるチキュの視線があまりに虚ろで、薄い肩や細い腕があまりに力無く落とされていたので、その寂しげな姿に声をかけるのは躊躇われた。