天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

「…………わかった。

今から俺も探すよ。


とにかく、遅くとも昼過ぎまでには見つけ出さないと………。


お前たちも、よろしく頼んだぞ」





サヤは微かに目を丸くして、「かしこまりました」と答えた。





(………タツノ様の口から、「よろしく頼む」なんて言葉が出るなんて。


アカネ様のご影響かしら………)





そう考えて、微笑ましく思う。




タツノは今までも別に、使用人たちに対して辛く当たるようなことは決してなかった。




しかし、天貴人の嫡男としての誇り高さがあり、女官や衛兵と気軽に口をきいたりはしなかったし、人々が自分の思い通りに動くのが当然と思っている節があった。





だから、今のように使用人に対して一段下がって頼むようなことは、考えられなかったのだ。




チキュを連れて来てから、タツノは物腰が柔らかく話しやすくなったと、女官たちも噂している。





(ーーーアカネ様のお蔭ね。


お似合いのお二人なのだわ)





サヤは弾むような足取りで、チキュの捜索を再開した。