天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

「あら、アカネ様って、確か………。


タツノお兄さまの奥方になられる方でしたわね」





姉のハツノが穏やかに言った。




ナツノは同意するように首を縦に振る。




「そうよ、お姉さま。

私たち、まだお会いしてないものね。

お兄さまったら、いつになったら紹介してくれるのかしら」




「そうねぇ。


あら、でも、そう言えば、今夜の宴にご参加させなさるって伺ったわよ。

宴の時にでもご招待いただけるのではないかしら」




「あ、そうなの? 宴にねぇ。

じゃあきっとそのつもりなのね。


やっとお会いできるのね、楽しみだわ」





周りの喧騒にも構わずに、のんびりと会話をしていた姉妹だったが、ハツノがふと気が付いたように首を傾げる。





「………あら。


夜の宴にご参加なさるのだったら、早くお支度をして差し上げなければならないのじゃないかしら。


天皇が催される宴だから、きちんと身支度を整えないといけないもの」




「そうよねぇ。

私たちも早起きして禊ぎをしたのだもの。


今からお化粧をして、正装を纏って、お香も焚きしめて………忙しいわよね」




「えぇ、宴の支度はお時間がかかるもの。


私たちも急がなくでは。


ねぇ、貴女たち。早くアカネ様をお捜しして、しっかりと華やかなご衣装を召させて差し上げるのよ」





近くにいた女官たちにそう言って、二人は立ち去っていった。