天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

わいわいがやがやと人々が走り回っている所へ、着飾った二人の美姫が現れた。




「まぁまぁ、皆さん。

そんなに慌ててどうなさったの?」




「そうよ、向こうの廊下まで声が聞こえてたわよ」




肩に羽織った薄布で上品に口許を隠しながら、近寄ってくる。




どちらも見目麗しく、良家の子女らしく奥ゆかしい姫君だ。



紅を施された唇と、腿あたりまで伸びた長い黒髪が、灯りに艶めいていた。





「あっ、ハツノ様、ナツノ様!」




最も近くにいた女官の一人が声を上げた。



二人の姫は、ムラノの娘たちである。



二人ともタツノの妹ということになる。






高位の天貴人の家に生まれ、何不自由なく育った姉妹は、おっとりと品のある少女たちだった。





「何かあったの?」




妹のナツノが興味深げに訊ねた。



声をかけられた女官が困ったように語り出す。





「………あの、アカネ様の姿がお見えにならなくって………。


夜明け前から衛兵たちも呼んでお捜ししてるんですけど、まだ見つけ申し上げていないのです………」