わいわいがやがやと人々が走り回っている所へ、着飾った二人の美姫が現れた。
「まぁまぁ、皆さん。
そんなに慌ててどうなさったの?」
「そうよ、向こうの廊下まで声が聞こえてたわよ」
肩に羽織った薄布で上品に口許を隠しながら、近寄ってくる。
どちらも見目麗しく、良家の子女らしく奥ゆかしい姫君だ。
紅を施された唇と、腿あたりまで伸びた長い黒髪が、灯りに艶めいていた。
「あっ、ハツノ様、ナツノ様!」
最も近くにいた女官の一人が声を上げた。
二人の姫は、ムラノの娘たちである。
二人ともタツノの妹ということになる。
高位の天貴人の家に生まれ、何不自由なく育った姉妹は、おっとりと品のある少女たちだった。
「何かあったの?」
妹のナツノが興味深げに訊ねた。
声をかけられた女官が困ったように語り出す。
「………あの、アカネ様の姿がお見えにならなくって………。
夜明け前から衛兵たちも呼んでお捜ししてるんですけど、まだ見つけ申し上げていないのです………」
「まぁまぁ、皆さん。
そんなに慌ててどうなさったの?」
「そうよ、向こうの廊下まで声が聞こえてたわよ」
肩に羽織った薄布で上品に口許を隠しながら、近寄ってくる。
どちらも見目麗しく、良家の子女らしく奥ゆかしい姫君だ。
紅を施された唇と、腿あたりまで伸びた長い黒髪が、灯りに艶めいていた。
「あっ、ハツノ様、ナツノ様!」
最も近くにいた女官の一人が声を上げた。
二人の姫は、ムラノの娘たちである。
二人ともタツノの妹ということになる。
高位の天貴人の家に生まれ、何不自由なく育った姉妹は、おっとりと品のある少女たちだった。
「何かあったの?」
妹のナツノが興味深げに訊ねた。
声をかけられた女官が困ったように語り出す。
「………あの、アカネ様の姿がお見えにならなくって………。
夜明け前から衛兵たちも呼んでお捜ししてるんですけど、まだ見つけ申し上げていないのです………」



