「父上、考えてもみて下さいよ。


アカネはあのように多少………いえ、かなりのじゃじゃ馬です。


呆れるほど活発で好奇心旺盛で、少しの間もじっとしていません。



このままでは、如何に見張りや護衛を付けていたところで、あいつは好き勝手に動き回ってすぐに誰かしらに見つかってしまうでしょう。


それくらいならばーーー」





そこまで聞くと、ムラノもにやりと笑みを洩らした。



タツノの皮肉な笑みと瓜二つである。





「…………なるほどな。


見つかる前に、お前の妻として人々に知らしめてしまう。


そして、秘密裏に攫ったりは出来ぬようにするというわけか………」





「そういうことです。

さすが俺の父上、以心伝心ですね。


………いくらミチハでも、ソガノ家の正統な嫡男の妻となれば、手を出すわけにもいかないでしょう………」





ムラノは満足気に微笑んだ。




しかし瞬間、不安そうな影を過ぎらせる。




「………だが、あのお転婆が宴などに大人しく出席するか?」





タツノはまたにやりと笑う。




「その点は大丈夫です。


すでに本人に了承を貰っていますので。


どうやら、俺の婚約祝いの宴が何かだと思っているようで、呑気にめでたいとか何とか言っていましたよ」





ムラノはチキュの間抜けさを更に思い知り、脱力した。