ーーーアカネ。
その名前がふっとタツノの頭に浮かんだ。
一日の始まり、日の光でだんだんと白む夜明けの空に浮かぶ雲を仄かに染める、紫がかった茜色(アカネ)。
首元を彩る鮮やかな首飾りの赤(アカ)。
人々の生活を照らす灯(アカシ)。
そう言えば「あかねさす」という言葉は、「日」や「光」、「朝日」、そして「照る」、「昼」といった言葉と縁の深いものでもある。
考えれば考えるほど、アカネという名はチキュにぴったりだと思われた。
「ーーーお前は、これから、アカネだ」
不意にそう声をかけられ、チキュは振り向いた。
果物で頬をぱんぱんに膨らませ、こくこくと頷く。
(…………これで、本当に大丈夫か?)
不安になりながら、タツノは溜息を吐いた。



