天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

そこにサヤが入って来た。




地国から届けさせた菓子類を持っているのに気付いたチキュは、「やったー! ありがとサヤ!!」と、もはや名前のことなど忘れたようにはしゃいだ。





その菓子は、霞では空腹を満たせないと言うチキュのために、わざわざ特別に地国から取り寄せたものだ。




炒った穀物粉に砂糖を混ぜて水で捏ね、丸めて寝かせてから火にかけた、焼き菓子だ。




天の一族にとっては強すぎる甘い香りが、部屋中に充満していた。



タツノは思わず鼻を覆ってしまう。




そんな菓子をさも美味しそうに口いっぱいに頬張りながら、さらに両手に果物まで持っているチキュを見て、サヤはおかしそうに笑いを堪えていた。






(………さて、どんな名前にしようか)




嬉しそうなチキュの姿を見ながら、タツノは考えを巡らせる。






(これから、俺の妻として一生を共にする名だ。


慎重に考えないとな………)







チキュに合う名前。





明るくて、朗らかで、真っ直ぐで。



周りをくっきりと照らし出す、眩しい太陽のような少女。